【診療雑感】百歳を迎えたAさんのこと・長寿村作戦

Aさん、百歳、おめでとうございます。

今夏、近所のAさんが、ついに満百歳の誕生日を迎えました。おめでとうございます。
彼女は、足腰が弱ったものの、今も自宅で、親子4世代の大家族に囲まれた生活を送っていらっしゃいます。数年前に転倒し腕を骨折しましたが、みごとに復活しました。
着替えや食事・トイレは家族に手伝ってもらいますが、寝室から食卓までなんとか歩いていらっしゃるようです。家族団欒のなかにAさんは、ちゃんと存在しています。

Aさんが、ふるさとの自宅で百歳を迎えることができたことは、本当に素晴らしいこと。私も自分のことのように嬉しいです。
ご本人の努力や持って生まれた体力・才能、そして運がなければ、長寿は望めませんが、それ以上に、「家族力」が重要です。つまり、見守る力・支える力が大事ではないでしょうか。

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診察室において高齢の患者さんは、「子供たちに疎んじられないようにしている」「子供ら夫婦に迷惑をかけてはいけない」「早く死なんといかん 」という意味のことを、しばしば口になさいます。
当初、私は慎ましい年配者の挨拶言葉くらいにしか思っていませんでしたが、現実的には、同居人どうしの人間関係がたとえ90歳以上の超高齢者にも降りかかっていると、認識するようになってきました。
超高齢者を見守る・支える「家族力」は、その家の経済力であったり、親子関係や、嫁姑・嫁舅関係、孫たちの性格などが総合的に関与して形成されるものですが、やはり人間関係はその中でも重要な項目のひとつです。

山添村では年配者は、長男家族と同居していることが多いので、お嫁さんとの相性が最重要項目です。お嫁さん(と言っても、超高齢者のお嫁さんは、すでに70歳前後)のご苦労は大変なものです。ストレスも相当なものと察します。お嫁さんの苦労を認識しストレスを和らげる力も「家族力」の重要項目ですね。診察室や往診先で私達医師は、微妙なお二人の関係を時に複雑な思いで接することがあります。時には、お二人のストレスが少しでも和らげることができるよう「家族力」を下支えする役目を担うこともあります。

ちなみに、Aさんは、「子供たちに疎んじられないようにしている」「子供ら夫婦に迷惑をかけてはいけない」「早く死なんといかん」という類のことは、いままでに一切おっしゃったことはありません。

超高齢者のための「家族力」と「地域力」

超高齢者を見守る・支える「家族力」にも限界があります。
そこで必要なのが、超高齢者とその家族を地域で見守り・支える力、つまり「地域力」ではないかと私は考えています。
地区の人たちが、すこし意識をもって地区の高齢者に接することができたら、家族もとても助かるはずです。山添村のような日本の原風景のような山村には、本来そういう共同体の機能が備わっていいたのですが、戦後の個人主義や、昨今猛威を振るう個人情報保守至上主義みたいな時代の波が、この田舎にも蔓延してしまった結果、地区で高齢者を見守っている状況とは、なかなか言えません。

そんな中で、Aさん家族がお住まいの山添村B地区では、数年前から公民館に地区の人たちが集まって、健康寿命を延ばそう・健康に老けようと、さまざまな活動が始まったと聞きました。
合言葉は、「みんなで百まで頑張ろう」らしいです。誰もが、今の状況を改めたいと思い始めているのです。

新しくスタートしたコミュニティ・ハウスの看板です。

B地区に負けじと、私たちの地区もNさんが提案してくださったのを機に、6月から野村医院旧診療所(通称、オールドクリニック)を利用して、コミュニティ・ハウス活動を始めました。地域の人々の「地域力」への理解が高まり必要性を感じない限りはコミュニティ・ハウス活動も軌道には乗らないと、焦らずに活動していますが、これが成功しないことには、地域の超高齢者がより快適な老後を送る環境が整わないと懸念しています。この力を高める(再生する)ことは、次の超高齢者世代である私たちが豊かな老後を迎えるための準備なのです。

野村医院オールドクリニックのコミュニティ・ハウスLINGER LONGERについて、ブログに書いていますので、下記のリンクからどうぞ、覗いてみてください。

Aさんとのスキンシップ!

さて、Aさんの話に戻りましょう。
Aさんは、お嫁さんに連れられて、時々車椅子で野村医院に来てくださいます。耳も遠くなり認知機能も低下していますが、大きな声で喜怒哀楽をちゃんと伝えてくださいます。
久しぶりにお会いすると、Aさんは大きな声で「先生に会えて嬉しい」とはっきり言ってくださいます。それから、まず両手で固い握手をして、そして、両手でハグしながら、お互いに元気であることを喜び合います。
彼女のスキンシップは、なかなか刺激的です。肌もきれいだし、ほっぺもふくよかです。

え? おかしいですか? 〇〇ハラスメント??
Aさんがそうしてくださるので、ついつい調子に乗ってしまっているのかな。
実は、彼女のこのような仕草は、「齢取ったら、あなたも、こんなふうにしなさいよ」と教えてくれているのだと私は理解しています。心を広く開いて、難しいことを言わず、明るくしなさいと。
きっとそうなんだ、この人の仕草から学ぶことがいっぱいある! そう考えるようになって、私は目覚めるものがありました。年配者のお話や仕草は、その人の積み上げてきた習性なのだから、私たちが気づくべきものが、それぞれの人にあると考えるようになりました。

ですので、診察にいらっしゃった超高齢の患者さんとは、彼らの振舞いに私も最大限のスキンシップでお返しすることにしています。患者さんからパワーを貰いつつ、私も医師として患者さんを見守り支えて、彼らがいかに暮らすべきか、考えていきたいと思っています。

災害対策では、命を守るには、自助・共助・公助がバランスよく機能することが大切と言われています。自助は自分で自分を助けること。共助は属する共同体、地域での支え。そして、公助とは、地方公共団体や国の支援ということ。今日私が提案した高齢者支援の「家族力」は、「自助」にあたるものかもしれません。「地域力」は「共助」です。「公助」は国などが打ち出している社会福祉や健康対策ということになりましょう。
一方で、災害対策とは異なり、超高齢者の健康維持のためには、医師が力を発揮する場面が多々あります。
それを「医師力」とでも呼んでもらえるように、私は「家族力」と「地域力」に配慮して関わっていきたいと思っています。

次の超高齢者世代である私達自身への準備でもある。

今夜は、台風12号が我が家の上を通過しているなかで、心を落ち着けて超高齢者を支える態勢について書いてみました。
医師として、患者さん自身、そのご家族、お住まいの地域にも配慮した診療を心がけていきます。

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