透析患者さんの雑誌「腎不全を生きる」と日本腎臓財団の活動

a-journal-for-patient-with-end-stage-renal-disease-treated-with-hemodyalysis

透析患者さんのための雑誌「腎不全を生きる」とは?

長年編集同人を勤めた雑誌「腎不全を生きる」を、今日は紹介したい(同人と言っても、実質なにもしてなかったんだけど)。
この雑誌は、公益法人日本腎臓財団が、慢性腎臓病、主に透析患者さんのために、年二回定期的に発行している発行部数4万部以上を誇る一大メディアです。
毎回、透析医療の問題点や、腎不全患者さんに生じる合併症などについて特集が組まれます。その領域の専門家が分かり易い文章で解説してくださる記事もお勧めですが、患者さん自身やご家族の経験談や座談会もたびたび記事になります。たとえば、腎臓移植の特集が組まれた最新号第59号には、移植を受けた患者さん数名が座談会で、ご自身の経験を話されています(下の図参照)。
大きな文字で印刷されているので、ご年配や目の悪い患者さんも読みやすくなっています。
こんな雑誌ですから、多くの患者さんに読んでもらいたいものです。透析を受けている人はもちろんですが、透析が間近と言われている人にもお勧めです。

日本腎臓財団について

しかし、この雑誌は、どこの書店にもありません。Amazonも扱っていません。雑誌に定価も示されていません。
日本腎臓財団の賛助会員である各透析施設に、患者さんの数に合わせて財団から送付されているのです。だから一般の人にはまったく知られていません。賛助会員でない透析施設では、だれもこの雑誌のことをご存知ないわけです。
全国に、透析施設は4,000余りありますが、そのうちこの財団の賛助会員は700~800施設しかありません。だから、一部の透析患者さんしか読んでいないということになります。
せっかく立派な雑誌なのに、これはとても残念です。雑誌の内容は、同人の一人だったから申し上げますが、偏りのない公正な記事で構成されています。毎回毎回、丁寧な編集の打ち合わせが今も行われているはずです。せっかく多くの人たちの努力と多額の経費が注がれたこの雑誌を、もっと多くの患者さんに読んでもらいたいものです。

この雑誌を発行している日本腎臓財団とはどんな組織なのでしょうか?
財団のホームページによると、我が国の透析医療の黎明期である昭和40年代に設立された日本腎臓財団は、公益的な立場で「腎に関する研究を助成し、腎疾患患者さんの治療の普及を図り、社会復帰の施策を振興し、皆様の健康に寄与する」ことを目的に、数々の事業を行っています。賛助会員の会費や諸団体・企業からの寄付にによって成り立っている財団なのです。
しかし、その理想とはともかく、現実はどうでしょうか?
少なくとも、透析患者さんむけの啓発雑誌「腎不全を生きる」を通した社会活動は、十分とは言えないのではないでしょうか。なぜなら、透析患者さんは毎年増え続けて、すでに33万人に達しています。全国の透析施設も増えています。逆に、この雑誌の発行部数は約10年前の62,000部をピークに漸減し、現在は4万部になっています。おそらく、賛助会員になる透析施設の数が減っているのではないかと推察します。
もちろん、透析患者さんへの情報ソースは、この雑誌だけでなく、諸種のものがありますから、この雑誌がすべての患者さんに行き渡らなくても良いかもしれませんが、国の認めた公益法人の最も大事な活動である「腎不全を生きる」の浸透率を高めたいものです。

財団のホームページには賛助会員が都道府県別に公開されていますが、地域差も際立っていることが分かります。
公益財団法人日本腎臓財団 都道府県別 医療施設
たとえば、三重県は県内透析施設53のうち23施設(43%)が賛助会員ですが、奈良県は45施設のうちたった3施設(6.6%)しかありません。愛知県は194施設中37件(19%)が賛助会員です。
この前、奈良県の腎友会の人と少し話す機会があったのですが、やはりご存知ではありませんでした。三重県では、以前に私が日本腎臓財団の活動に積極的にかかわったこともあり、賛助会員になってくださる施設が飛躍的に増加しました。何が言いたいのかって? 賛助会員になるならないは、経営者の気持ちひとつだということなんです。賛助会員になることで、自分の病院の患者さんのためにもなるって考えてもらえたら良いのですが。
みなさんが透析を受けている施設は、賛助会員になっていますか? 上記のリンクでぜひご確認ください。

実は、私は、この雑誌の編集同人を辞めることにしました。野村医院を開業して1年を経過し「透析医療」から遠のくようになったうえに、同人として名前だけの存在になっていたからです。三重大学に勤めていたころから10年以上お世話になったので、寂しいものがあります。
一旦辞めると決心すると、人間というのは不思議なもので、この雑誌をもっと世の中に広く認知してもらいたい気持ちが強くなってきたのです。
編集同人の一人になった頃は、透析医療のオピニオンリーダーや権威ある人たちと仕事することに夢中で、この雑誌の認知度にまでは興味が及ばなかったのに。

「腎不全を生きる」の入手方法

①もし、あなたの透析施設が賛助会員であるにもかかわらず「腎不全を生きる」を受け取っていなかったら。
ぜひ、スタッフに尋ねてみてください。きっと事務所などに保管されているかもしれません。
実は、賛助会員施設において、患者さん向けに送付されたこの雑誌が自施設の患者さんに手渡されていないこともあるようです。うがった見方かもしれませんが、賛助会員にはなるが、患者さんに過剰な情報提供までする必要はないと考えている経営者もあるのではないでしょうか。
透析患者さんは、自分たちで全国腎臓病協議会(全腎協、腎友会)などを組織していますが、自施設にこのような団体の支部ができることに神経質な施設もあるくらいですから、本雑誌のような啓発雑誌さえ煙たい存在と捉えているむきもあるかもしれません。私の杞憂であれば良いのですが。

②もし、あなたの透析施設が賛助会員でなくても、購読できる方法があります。
下記の図を見てください。雑誌「腎不全を生きる」の巻末に閉じられている葉書の説明です。これを読んだら、自施設が賛助会員でなくても、取り寄せが可能なことが分かりますね。
バックナンバーの特集記事を確認して、興味あるものを葉書に書いたり、FAXで注文したら、きっと送ってもらえると思います。送料はご自身で負担してください。
バックナンバーの一覧は、このリンクで確認可能です。全国の透析専門家が皆様のために作った雑誌を、ぜひ手に取って、自分たちの健康のために役立ててください。
公益財団法人日本腎臓財団 雑誌「腎不全を生きる」

♣今日は、自分が編集同人を辞めるにあたり、雑誌「腎不全を生きる」をもっと広く認知してもらいたくて、愚痴っぽいことも書いてしまいました。
透析を受けている患者さんに、適切な情報が伝わるためですので、どうかお許しください。
毎日の透析生活が平穏でありますように、また、お世話になった日本腎臓財団が、益々発展するよう祈念申し上げます。

関連記事

  1. やんばいのぉ山添村HP画像①

    サイト「やんばいのぉ山添村」発足

  2. 山添村大塩地区で健康講座 ~2年ぶり~

  3. ある孤独死とコミュニティハウス活動

  4. 往診車両「与作号」デビュー

  5. 山添村切幡地区で健康講座をさせていただきました

  6. はじめての往診 基本的には看護師が随行します

    初めての往診雑感

最近の記事 おすすめ記事
  1. 登録されている記事はございません。