壊れてしまった家庭血圧計
高血圧と糖尿病のために、伊賀市から通院中のHさん、70歳代女性。
今日は、自宅で使っている血圧計を持参されました。
毎日朝夕測定して、診察のたびに、私に記録ノートを見せてくださる真面目な患者さんですが、
今回は家庭血圧計が壊れて、彼女の連続測定記録は途切れてしまいました。
どれどれ、見せていただくと、カフに圧が加わらなくなっていました。
耳を当ててみると、カフから空気がシューーっと抜ける音がしました。
どこかに小さな穴が開いてしまったようです。
すでに購入して10年近く、まさに「愛用」されてきた家庭血圧計でしたが、新しい機械を購入することになりました。
悔しそうな顔を見ると、Hさんが大事に使ってきたことがよくわかりました。
新しい血圧計をどれにしようかな?
一緒にカタログを見て注文を手伝うことになりました。Hさんは、上腕にカフを巻き付けて計る血圧計を
ずっと使用してきたのですが、買い替えるとなると、
「かさばらない・小さい」
「簡単に巻ける」
「なるべく廉価な」タイプが欲しい、
だから、手首式血圧計を買いたいとおっしゃいました。
しかし、私は、即座に「NO」と申し上げ、従来と同じ上腕に巻き付けるタイプをお勧めしました。
★「手首や指で測定する機械は正確ではないので、旅行などに使う簡易版」
★「高血圧治療には、上腕で正しく測定した家庭血圧記録が、とても大事」
★「齢を取って、うまくカフが巻けなくなったら、手首式にしたらよい」
と説明して、彼女に納得してもらいました。
日本高血圧学会でも、家庭で測定するなら“上腕式”を推奨しています。
みなさんは、どのタイプの血圧計をお持ちですか?
全国に出回っている血圧計は、一説によると4千万台を下らないとか。
つまり、一家に一台。テレビや冷蔵庫と同じくらい普及している。
Hさん宅では、ご主人もいっしょに使っているようです。
日本中で、家庭血圧を測定している人は、数千万人にもなりそうです。
そんな国ってあるでしょうか? 我が国が世界一の長寿国たるのも、家庭血圧計のおかげかも。
正しく測定した血圧記録が、正しい治療には必要です。
Hさんは、高血圧治療を始めたころから、家庭血圧を測定するようになり、血圧手帳は巻ノ二十にまで達しています。
‟ちゃんと測定した信頼できる血圧情報“を私は毎回拝見して、年に二回程度、お薬を変更します。
夏の過降圧を避けるために、初夏に薬剤を減量し、涼しくなり始める頃に血圧上昇を懸念して、お薬を冬バージョンに戻すのです。
その結果、彼女の血圧はとても安定しています。
糖尿病や高血圧による、脳卒中・心筋梗塞・腎不全・足の血管が細くなる病気などを予防するには、
血糖管理とともに、血圧の適切な管理は必須です。
きっとこれからも、Hさんは、ずっとこれを繰り返して下さることでしょう。
みなさんも、『血圧の記録をかかりつけ医と、しっかり共有』してください。
家で測定する血圧の記録は、みなさんが思っている以上に、医師は期待して待っています。
だからこそ、適切に正確な測定を心がけましょう。
では、‟ちゃんと測定した信頼できる血圧”の測定方法は?
改めて、次の機会に説明したいと思います。