2022年12月末 当院のPCR検査の概況
令和4年3月に野村医院にAbbott社のPCR装置を導入して22か月が経過しました。
年末を迎えて、山添村の感染状況なども俯瞰できると思いますので、この二年間のPCR検査の状況を振り返りたいと思います。
(今年3月に、導入から1年というテーマで、一度総括しています。この装置がどれほど便利で信頼性が高いものかも説明しています)
22か月間で、PCR検査は619回実施しました(自分自身や医院の従業員の検査を除く)。
そのうち陽性結果は191回(30.9%)でした。
下の表は、22か月を、前期(21年3月~12月)、中期(22年1月~6月)、後期(22年7月~12月)に大別して比較したものです。
前期は、200人以上に検査したものの、数回しか陽性結果を認めませんでした(陽性率2.9%)。当時は、社会的な行動規制が厳しくて、「PCR陰性証明」を求めて検査を受ける人が多かったことも、これほど陽性率が低かった一因かもしれません。
今年は第6波とともに年が明けました。検査数も陽性率も増加しました。私達の診療にも、感染防御に一段と注意を要するようになりました。それでも、陽性率は25%程度でした。
今夏の第7波では、全国の患者発生数が、いちだんと増加しましたが、山添村においても、検査数も陽性率も今までになく増加しました。大和高原に位置する山添村においても、全国の流行と時間的なラグはないと言っても過言ではないでしょう。
月別の変化を見てみると
この数字を、さらに月別にして詳細をみてみると、下のグラフのようになります。
バーの高さが、その月の検査数、青色部分が、陽性数を表わしています。
今年6月には検査回数が9回と、PCR検査開始以来初めて一桁に減ったのも束の間、第7波のおりには、7,8月の激増しました。
8月には初めて74回も実施することになりました。この頃は、昼休みや休憩時間がまったくなくなってしまいました。
9月はすこし小康状態となりましたが、10月以降、徐々に増加。11月、12月になって、陽性率も65%に迫っています。
なお、今年後半には、村営診療所にも同じAbbott社のPCR装置が導入されたことや、私自身の体力にも限界があり、今夏ほどには検査数は延びておりません。
当院で診断したコロナ感染者のその後
200名近いコロナ感染患者さんと接してきたことになります。
喜ばしいことに、私が把握している限りという条件付きですが、コロナ感染症のために亡くなった方は、まだありません(2022年12月末現在)。
この辺りの詳しいことは、項を改めて記したいと思いますが、どんな治療を行ってきたかということが大事です。
★191人(のべ人数です)のなかで、入院加療を要したのは7名です。
そのほとんどは、ワクチンを打っていなかった人や高齢者です。
今年前半から夏に集中しています。オミクロン株が主流になった今年秋以降に、入院した人はありません。
入院を要した人たちは、私が保健所に入院を直接申し込んだ人ばかりです。
入院を申し込むタイミングは、診断した翌日か翌々日までです。
見極めは、その時期にあると思っています。
ですので、翌日には、多くの場合、電話で病状を確認しています。
★医師一人のクリニックであり、コロナ感染診療に特化しているわけではありません。
普段は、慢性疾患の診療や、高齢者の訪問診療なども行っていますので、コロナ感染症患者さんに当院ができることには限界があります。
高齢感染者には、本人や家族が承諾される場合は、積極的にラゲブリオというコロナウィルス特効薬を処方しています。
ラゲブリオが承認されてちょうど1年になります。
当院では、40名の患者さん(50歳~96歳)に処方しました。二名の方が、嘔気のために服用を断念されましたが、他の人には大きな副作用は認めませんでした。
80歳以上の人には、細菌性肺炎の合併を予防するために、経口抗生剤も併用することがあります。
ところが、単に診断だけして、その後、フォローしてくれない医療施設があると聞きました。
それどころか、検査で陽性だと伝えるだけで、投薬もしないクリニックもあるようです。耳を疑います。
それでは、いくらオミクロン株がデルタ株ほど肺炎を起こさなくなっている(弱毒化している)とはいえ、重症化する患者さんを見逃してしまいかねません。
医療逼迫が取り沙汰されていて、重症化リスクの低い人への対処は、それくらいで仕方ないのかもしれませんが、すべてを保健所任せにしないで、私は前述のように、出来る限り、診断から数日間は、患者さんの容態把握に努めることにしています。
★後遺症のことも気になりますね。
私の印象ではあまり多くないと感じていますが、意識して聞き取っていないからかもしれません。
ひと月以上の倦怠感やボーっとした感じが続いた人が1名(入院歴あり)。
認知症状が極端に低下した人1名(その後回復、ただし、この人はPCR検査もワクチンも特効薬もない時期に発症)。
同じくひと月以上、空咳が続いた人が1名(入院歴なし)。
筋力低下と抑うつ症状が2,3週続いた人が2名(入院歴なし)。
味覚障害・嗅覚障害をしばらく訴えた人が数名。
これくらいです。
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山添村は、県下でもコロナワクチン接種率が高い村ですので、重症化する人は少ないと期待できます。
しかし、油断禁物、予防に最大限努力して、どうか佳い新年をお迎えください。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。