腎臓病を治す薬剤はないのですか?

薬のイメージ写真

腎臓病はお薬がないんですね?

私は腎臓専門医を志して既に30年を越えますが、その間に、多くの患者さんから何度も次のような質問というか嘆きの言葉を聞かされてきました。

「先生、腎臓病には薬がないらしいですね?」
「腎臓病になったら、一生治らないんでしょう?」

紹介されてきた患者さんが、初めての腎臓病外来受診の際に、診察室に入って来るや、皆さん、まるで、挨拶代わりのように口を揃えてこんな風におっしゃるのです。
やれやれ、またか、、、これから腎臓病の治療をしようと思っている専門医を前にして、患者さんがすでに白旗を揚げている、戦意喪失している・・・
確かに腎臓病の克服は困難で、生涯を通じて根気強い養生と闘病が必要です。
患者さんが病気と向き合えるように努めるのが私の仕事なのに、診察室に入って来る時点でこんな気持ちでいらっしゃるようでは、腎臓医としても暗澹たる気持ちになります。

なぜ患者さんは、そう考えるようになったのか?

いったい患者さんがこんなことを口にするのは、どうしてなのでしょう?
病気のことやお薬のことに詳しくない患者さんが、「腎臓病には薬がない」とか「腎臓病になったら、一生治らない」なんておっしゃるのは、どうも腑に落ちない。
ずっとそう感じてきました。

最近、ようやく、積年の疑問が解けてきました。
なぜ患者さんがと言うのか原因が、おぼろげながら分かってきたのです。

『子は親の背中を見て育つ』ということわざがありますが、
『患者さんは医者の顔見て養生する』と私は結論付けました。

実は、医師がそう思っているからなのです。

下のグラフを見てください。これは、日本中の医師が、どんな薬剤が欲しいか、開発が求められているかを調査するために実施されたアンケートの結果です。
グラフの右上には、近年、優れた薬剤がたくさん開発されて治療しやすくなった病気が並んでいます。
一方で、グラフの左下には、開発・発明が待たれる病気や医師が薬がなくて治療に難渋する病気が並んでいます。
腎臓の病気、たとえば、糖尿病性腎症(糖尿病で腎臓が悪くなった病気)や慢性腎臓病(腎臓の働きが徐々に低下している病気)がどこか探してみてください。

腎臓病の薬グラフ 医師がいかに腎臓病に対する薬剤の開発を待ち望んでいるかが分かります。

詳しくは、下記のリンク先をご覧ください。
製薬産業の社会的貢献

だからこそ腎臓医が必要なのです。

奇しくも、このアンケートは、医師が『腎臓病の診療は難しいなあ、薬がないしなあ』と感じていることをも示していると私は考えています。
つまり、患者さんが「腎臓病に薬がない」「腎臓病は一生や」と思うのは、主治医の影響なのです。
医者が日頃一番困ってるのが腎臓病なのです。だからこそ、私たち腎臓医の存在意義があります!

有効な薬が少ないからといって、病気が治らないからといって、治療や養生を諦めますか?

養生と治療、みなさんの努力には必ず見返りがあります。

みなさんはどうされますか?
嘆いている患者さんに、「腎臓病は、養生して闘病したら、しただけの見返りが必ずある!」と、私は声を大にして説明させていただいています。
諦めたら終わりです。やったらやっただけの効果があります!
腎臓に負担をかけないように、腎臓を長持ちさせるように、私がこれから、お手伝いをしますから、一緒に腎臓病に取り組みましょう。

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