村内の新しい特養施設の‟配置医”に

4月から、新しい仕事を始めました

2023年(令和5年)4月1日に、山添村に新しい特別養護老人ホーム(特養)が開業しました。
三階建ての立派な施設が、名阪国道山添インターの近く、ふるさとセンターの敷地内にできたのです。
その事業主に請われて、私は「配置医」を引き受けました。
配置医とは、施設に入所する高齢者の「かかりつけ医」みたいな存在です。

いままで、老健や特養などの施設で仕事をしたことが一度もないうえに、
特養における配置医の医療行為は、診療所やクリニックが通常に行っている保険診療とは、
別のルールがあるので、最初から戸惑う事ばかりです。
まずは、入所されている方々の回診から、私の仕事は始まりましたが、
荷が重い仕事になりそうだと、滅入ってしまうのでした。

配置医としての心構え

そんなある日、入所者のお一人がお亡くなりになりました。
真新しい施設の一室で、ご家族の立会いの下で、御臨終を告げました。
開業したばかりの施設にせっかく入所されたのに、ほどなくして人生を終えてしまわれたのです。

実は、この人は、私の父と生前仲が良かったので、私もよく存じ上げていました。
数年前までは、卒寿(90歳)を目前に控えても、シッカリされていたのですが、
度重なる脳梗塞や治療できない腫瘍が、この人をすっかり衰えさせてしまっていたのです。
数年ぶりにお会いした時、この人は、私が誰なのかさえ、もう分からなくなっていました。

入所されてから、この人を看取るまで、短い期間ではありましたが、
人生の最期に関わらせていただくことができました。
実は、山添村を含め中山間においては、市中よりも、自宅で看取られる割合が低いのです。

みなさんは、田舎は家が広いし、自宅で最期まで過ごす人が多かろうと
思っていらっしゃるのではないですか?
実は、そんなことはありません!

男女共働きは、田舎も都会も同じです。
交通の便が悪く、職場までの通勤に時間を要しますので、自宅にいる時間は、当然短くなります。
昔からの家屋はバリアフリーとは程遠い構造なので、
介護や看取りをする家族には、ありがたいものではありません。
そのうえ、訪問看護などを提供する業者のほとんどは、村外から来ているのです。

だから、山添村の住民も、実は自宅で最後を迎えていらっしゃる人は、
全死亡者の、10%にも満たない状況なのです。
私は、そのことに忸怩たる想いを抱いているのです。

山添村に開業したこの施設には、私が以前から交流のある人や私が診療してきた人も、
入所されることになるでしょう。
なるべくならば、自宅で看取ってあげたいというのが、私の本来の気持ちです。
ですが、今回旧知の方を、新しい特養で看取ることになり、心境が変化し始めました。

家族の事情や訪問看護体制が整わない中山間では、なかなかそれが出来ないのであれば、
このような特養での看取りも、致し方ないのかと考えるようになってきたのです。
「特養に入所された人たちと、私なりの方法で接していこうではないか」と。

この人から教えてもらった友情の言葉

さて、もう一度、先日亡くなった人の話に戻ります。
ご臨終の席で、私は娘さんやお孫さん達と、たった今旅立たれた個人を偲び、色々と話をしました。
生前に交わした言葉や、お元気だったころのエピソードなどを思い出して、ご家族に伝えました。

さらに、その場で、ご家族に知ってほしいことがあったのですが、どうしても思い出せないのです。
記憶があいまいでうろ覚えだから、咄嗟の際に、役に立たない、、残念ですが、私も老齢の域に入っているのです。

施設を後にしてからも、それが気になっておりました。
幸い、数日して、彼からもらったメモが出てきて解決しました。
それが、これです。

友達とのつきあい、人間の交わりの深さを表わした言葉をまとめたものです。
左から、
「竹馬友」 この中で、最も知られている言葉。竹馬に乗ったことがない人でも知っていますね。
「布衣友」 その昔、身分によって身に着ける服やその色は決められていました。この言葉は、身分の分け隔てなく付き合える友達という意味です。
「莫逆交」 意気投合して、意見の違いがまるでない親密な関係を意味しています。
「金蘭交」 崇高な付き合いのたとえ。二人の親交が、金属を断つほど強く、蘭の香りさえ漂うほど崇高なこと。
「忘年交」 年の差などを感じない、忘れてしまうほどの関係を指します。
「刎頚交」 首を刎ねられようが、怯まない友情を意味します。走れメロスのような仲ですね。
「水魚交」 魚と水は切っても切れない間柄。それほど親しいということ。

私は、彼から教えてもらった言葉をひとつひとつ噛みしめながら、
特養の配置医という仕事についても、改めて考えてみました。
繰り返しになりますが、故郷にできた特別養護老人ホームに入所されてくる人たちと、
配置医として関わるだけでなく、私なりに、人間同士の付き合いをして行こうと考えるようになりました。

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